【IBD専門医Q&A】クローン病・潰瘍性大腸炎の「食事」戦略——「栄養療法」を知れば、食事はもっと自由になれる|仙台駅の消化器内科・胃カメラ・大腸カメラ|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

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【IBD専門医Q&A】クローン病・潰瘍性大腸炎の「食事」戦略——「栄養療法」を知れば、食事はもっと自由になれる

【IBD専門医Q&A】クローン病・潰瘍性大腸炎の「食事」戦略——「栄養療法」を知れば、食事はもっと自由になれる|仙台駅の消化器内科・胃カメラ・大腸カメラ|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

2026年5月12日

【IBD専門医Q&A】クローン病・潰瘍性大腸炎の「食事」戦略——「栄養療法」を知れば、食事はもっと自由になれる

こんにちは。仙台駅前でIBD(炎症性腸疾患)診療と内視鏡診療に力を入れている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室空間で、大学病院レベルの専門的な治療をスムーズに受けていただけるクリニックを目指しています。

今回は、診察室で最も多くご相談をいただくテーマの一つ、「IBDと食事」についてお話しします。

ネットで検索すると「あれもダメ、これもダメ」という情報ばかり出てきて、「食べられるものがない…」「もう食事を楽しめないのか…」と不安になっている方も多いでしょう。しかし、専門医の立場から申し上げれば、最新の治療を組み合わせることで、IBD患者さんの食事はもっと自由になれます。

現在のIBD治療において、昔のような「あれもこれもダメ」という厳しい食事制限は過去のものになりつつあります。「どのような食事制限が必要か?」「栄養療法(えいようりょうほう)とは?」など、皆さんの疑問にお答えしていきます。

過去の記事をまだご覧になっていない場合は、「潰瘍性大腸炎治療の全体像」や「クローン病治療の全体像」もご覧くださいね。

過去記事:潰瘍性大腸炎の治療を総括する:基本の5-ASA製剤から最新治療までのステップ

過去記事:クローン病の治療を総括する:早期の「徹底管理」が未来を分ける理由

1. 「食事制限」と「栄養療法」の違いはご存知ですか?

IBDの治療において、この2つは似ているようで、実は全く別物です。

食事制限(守りの姿勢)

炎症を悪化させないために、「脂質や繊維の摂取を控える」ことです。これはあくまで「我慢」がベースになります。

栄養療法(攻めの治療)

「成分栄養剤(せいぶんえいようざい)」という、アミノ酸レベルまで分解されていて腸に負担をかけない栄養剤(プロテイン飲料のように粉を水で溶きます)を、「食事の代わりに、あるいは食事にプラスして摂取する治療」のことです。

代表的な成分栄養剤に「エレンタール」があります。これは、腸の炎症を鎮め、粘膜を修復する力を持った「プロテイン飲料のように飲むお薬」とも言えるものです。IBDの治療薬が少なかった時代は、厳しい「食事制限」と「栄養療法」を徹底することが唯一の道でした。

2. 「半分は栄養剤、半分は自由」というHalf ED(ハーフ・イーディー)戦略

私が以前勤務していた東北大学では、「Half ED」という治療法を行ない、その有効性を世界に先駆けて証明してきました。

これは、「1日の必要エネルギーの半分をエレンタールなどの栄養剤で摂り、残りの半分は普通の食事を摂る」という方法です。実際にこの方法で、再燃(症状が悪化すること)を抑える効果が非常に高いことが分かっています。

「全部を栄養剤にする」のは辛いので、東北大学では「半分は治療(栄養剤)で頑張りつつ、残り半分の楽しみ(食事)にあまり制限はかけない」というバランスで、無理なく続けられるよう配慮していました。栄養療法を味方につけることで、結果的に「あれもダメこれもダメ」という厳しい食事制限から解放されるのです。

3. 薬の進化が「食事の自由」を広げた

現在は、インフリキシマブやアダリムマブを始めとして、多くのアドバンスド・セラピー(高度な治療、分子標的薬などとも言われます)が登場しています。これらのお薬が炎症を強力に抑えてくれるおかげで、無理な食事制限や栄養療法をしなくても、腸の状態を安定させることが可能になったのです。

最新の治療指針でも、「患者さんの受容性(本人が無理なくできる範囲)があれば栄養療法」という、QOL(生活の質)を重視したスタンスに変わっています。

なお、残念ながらアドバンスド・セラピーの効果が鈍ってきてしまった場合など、栄養療法を上乗せすることが有効とされています。栄養療法は減りつつあるものの、まだ大事な治療であることは変わりません。

4. 専門医として伝えたい「食事の注意点」

基本的には「食べて調子を崩すものでなければ、過度に制限しなくて良い」と指導していますが、専門医として以下の点だけはお伝えしています。

クローン病で狭窄(きょうさく:腸が狭い部分)がある場合

腸が物理的に狭くなっている方は、キノコ、海藻、野菜などの繊維質が詰まるリスクがあります。繊維を細かく刻むなどの工夫は必要です。

クローン病の喫煙は「絶対にNG」

食事よりも何よりも、タバコは最大の悪化要因です。これだけは、食事の自由と引き換えに、絶対に守っていただきたいポイントです。

潰瘍性大腸炎の場合

潰瘍性大腸炎はクローン病ほど食事の影響を受けません。基本的には普通の食事で大丈夫ですが、ご自身で「これを食べるとお腹が張る、下痢をする」というものがあれば、個別に控える程度で十分です。

5. まとめ

当院の治療目標は、単に数値を良くすることではありません。「病気を忘れて、普通の日常生活を送れること」です。

ネットの情報に振り回されて、食べること自体が怖くなってしまっている方を一人でも減らしたい。当院では、最新のお薬と栄養療法をバランスよく組み合わせることで、あなたにとって最も負担の少ない「食のカタチ」を提案します。

「食べる喜びを諦めない」ために、「これなら続けられる」というラインを一緒に見つけていきましょう。

引用文献

1. 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和7年度改訂版
2. Takagi S, Utsunomiya K, et al. Effectiveness of an ‘half elemental diet’ as maintenance therapy for Crohn’s disease: A randomized-controlled trial. Aliment Pharmacol Ther. 2006;24(9):1333-40.
3. Hirai F, Ishihara H, et al. Effectiveness of concomitant enteral nutrition therapy and infliximab for maintenance treatment of Crohn’s disease in adults. Dig Dis Sci. 2013;58:1329–1334.
4. Kamata N, Oshitani N, et al. Efficacy of concomitant elemental diet therapy in scheduled infliximab therapy in patients with Crohn’s disease to prevent loss of response. Dig Dis Sci. 2015;60:1382–1388.

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