2026年6月16日

こんにちは。仙台駅前で消化器内視鏡と炎症性腸疾患(IBD)の専門診療を行っている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室を多数ご用意し、リラックスして受診いただけるような環境を整えています。
これまで、大腸カメラ検査の必要性や、検査中の痛みなどについてお話ししてきました。今回は、検査そのものが持つ「治療」としての側面、特に「ポリープを切除することの意義」について、深く掘り込んでお話ししたいと思います。
過去記事:仙台は大腸がんが多い?「症状がない」今こそ、大腸カメラ検査を受けるべき3つの理由
過去記事:便潜血で再検査?「たぶん痔だろう」が一番危ない理由を専門医がお伝えします
1. 大腸カメラ検査は「検査」と「治療」を同時に行える稀有な検査です
CTやバリウム検査(造影剤を飲んで撮影するレントゲン検査)は、ポリープの「有無」を確認することはできますが、その場で取り除くことはできません。異常が見つかれば、日を改めて内視鏡検査を受け直す必要があります。
一方、大腸カメラ検査は違います。検査中に病変を発見したら、そのまま専用の器具(スネア:輪っか状のワイヤー)を使って、その場で切除することができます。「検査」と「治療(大腸がんの予防)」を一度に完了できる、非常に効率の良い医療なのです。
なお、胃カメラ検査は、大腸カメラ検査とは違い、病変を認めても(あとで解説する)生検しかできません。
2. 「良性だから切る意味がなかった」というのは誤解です
ここで、多くの方が間違えやすいポイントについてお話しします。
「切除したポリープを顕微鏡で調べたら、良性の腺腫(せんしゅ)でした」と説明すると、安心される一方で、「がんじゃなかったなら、切らなくてもよかったの?」と誤解される方も少なくありません。
しかし、これは順序が逆なのです。大腸がんの多くは、最初から「がん」として発生するのではなく、良性のポリープが時間をかけて徐々に「がん化」していきます(これをアデノーマ・カルチノーマ・シークエンスと呼びます)。
つまり、「良性の段階で見つけて切除した」ということは、「将来がんになる前に、その芽を摘んでしまった」ということに他なりません。実際に、内視鏡でポリープを切除することで、大腸がんによる死亡率が大幅に減少したという大規模な研究結果も報告されています。
3. 「total biopsy」という考え方
専門的な話になりますが、内視鏡で病変を切除する行為は「total biopsy(トータル・バイオプシー)」という考え方で捉えることができます。
通常の生検(バイオプシー)は、病変の一部だけを小さくつまんで採取し、顕微鏡で調べる検査です。これでは、病変全体のうち、たまたまつまんだ一部分の情報しか分かりません。本当に悪い部分(がん化している部分)をつまんでいないと、見逃してしまうこともあります。
これに対して、病変を「丸ごと」切除してしまえば、病変の全体を顕微鏡で評価することができます。これは、「診断」としての精度が高いだけでなく、病変そのものを取り除いてしまうので「治療」を兼ねていることになります。診断と治療を兼ねた、いわば「完全な生検」というわけです。
小さなポリープであれば、この一括切除がその場で完了し、日帰りで終えることができます。
4. クリニックで対応できる病変の範囲
「大腸の病変を切除する」と聞くと、大掛かりな治療を想像される方もいらっしゃるかもしれません。実際、早期がんなどが浅く広がっている場合、病変の下に薬剤を注入しながら専用のナイフで一括切除するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)という高度な治療法もあります。これは入院での対応が必要となる、より専門的な治療です。
一方で、大腸カメラ検査中に見つかる病変の多くは、10mm程度までの比較的小さめのポリープです。このサイズの病変であれば、出血のリスクを抑えた安全な手技で、検査と同時にその場で切除することが可能です。
当院では、大学病院で内視鏡治療の指導を長年行ってきた経験を活かし、検査中に発見した病変の多くを、外来の日帰り検査の中で安全に一括切除しています。「病変が大きい」など、より専門的な判断が必要な病変があれば、適切な治療方針(入院施設へのご紹介など)をご提案します。
5. 「切除しておしまい」ではなく、その後も見守ります
ポリープを切除したら終わり、というわけではありません。切除した病変の種類や数、大きさによって、次回の大腸カメラ検査を受けるべき間隔(サーベイランス)が変わってきます。
「切除してしまったら、しばらく検査は受けなくていい」という思い込みも注意が必要です。当院では、切除した病変の病理結果をもとに、お一人おひとりに合った次回検査のタイミングをご提案しています。
6. まとめ
大腸カメラ検査における「ポリープ切除」は、単なる作業ではありません。良性の段階で病変を見つけ、丸ごと取り除くことで、将来のがんを未然に防ぐ「予防医療」そのものです。
仙台駅前で、検査と治療を兼ねた質の高い大腸カメラ検査を受けていただけるよう、これからも丁寧な診療を心がけてまいります。気になることがあれば、いつでもご相談ください。
引用文献
1. Zauber AG, Winawer SJ, et al. Colonoscopic polypectomy and long-term prevention of colorectal-cancer deaths. N Engl J Med. 2012;366(8):687-96.
2. 大腸癌研究会. 大腸癌治療ガイドライン医師用2024年度版.(なお、患者さんのための大腸癌治療ガイドライン 2022年版はこちら)