【内視鏡専門医Q&A】ピロリ菌を放置してはいけない理由─除菌治療・ABC検診・胃カメラの役割を正しく知ろう|仙台駅の消化器内科・胃内視鏡検査(胃カメラ)・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

〒980-0021宮城県仙台市青葉区中央二丁目1番5号 青葉21ビル 3階

022-797-9171
(9:00-18:00)

WEB予約 お問い合わせ
院内

【内視鏡専門医Q&A】ピロリ菌を放置してはいけない理由─除菌治療・ABC検診・胃カメラの役割を正しく知ろう

【内視鏡専門医Q&A】ピロリ菌を放置してはいけない理由─除菌治療・ABC検診・胃カメラの役割を正しく知ろう|仙台駅の消化器内科・胃内視鏡検査(胃カメラ)・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

2026年9月29日

【内視鏡専門医Q&A】ピロリ菌を放置してはいけない理由─除菌治療・ABC検診・胃カメラの役割を正しく知ろう

こんにちは。仙台駅前で消化器内視鏡と炎症性腸疾患(IBD)の専門診療を行っている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室を多数ご用意し、リラックスして受診いただけるような環境を整えています。

これまでのコラムでは、IBD(炎症性腸疾患)や大腸の病気を中心にお話ししてきました。今回は少し視点を変えて、「胃」にまつわる最も大切なテーマ、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)と胃がん予防についてお話しします。

「IBD専門のクリニックなのに、なぜ胃の話?」と思われるかもしれませんね。実はそんなことはなく、IBDの診断や病変の評価には、大腸カメラだけでなく胃カメラによる確認も重要です。胃カメラ検査で食道・胃・十二指腸に病変が及んでいないかを確認することは、正確な診断と治療方針の決定に欠かせません。

さらに、IBD患者さんであるかどうかにかかわらず、健診や人間ドックでピロリ菌陽性を指摘されて受診される方は非常に多く、当院でも日常的に対応しています。「ABC検診でB判定だった」「ピロリ菌がいると言われたけれどどうすればいいか分からない」というご相談も、ぜひお任せください。

1. ピロリ菌とは何か?─「胃内にいても症状がない」が厄介な理由

ピロリ菌(Helicobacter pylori:ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の粘膜に住みつく細菌です。強い酸性の胃の中で生き続けることができる、非常にしぶとい細菌です。

日本人の感染率は年代によって大きく異なります。40代以上では感染率が高い(中高年世代の多くは幼少期に感染している)一方、20〜30代の若い世代では感染率が低下してきています。それでも日本全体では相当数の方が感染していると推計されています。厄介なのは、感染していても多くの場合は自覚症状がほとんどないという点です。だから「症状がないから大丈夫」という誤解が生まれるのですが、ピロリ菌は静かに、しかし確実に、胃の粘膜をじわじわと傷つけ続けています。

ピロリ菌が引き起こす主な病気は以下の通りです。

・慢性胃炎(まんせいいえん):ほぼ全員に起こり、自覚症状はないことが多い

・胃潰瘍・十二指腸潰瘍(いかいよう・じゅうにしちょうかいよう):胃や腸の粘膜が深くえぐれる

・胃がん:日本人の胃がんの原因の90%以上を占める

・胃MALTリンパ腫(いMALTりんぱしゅ):まれだが胃に発生するリンパ腫の一種

・機能性ディスペプシア(きのうせいディスペプシア):胃もたれ・不快感が続く状態のこと

2. 「除菌すれば胃がんは防げる」は本当か?

答えは「防げる確率が大幅に上がる」です。

2025年に発表されたランダム化比較試験と観察研究を統合した最新のメタ解析では、ピロリ菌陽性の方が除菌治療を受けることで、胃がんになるリスクが約36%低下(相対リスク0.64)し、胃がんで死亡するリスクも約22%低下(相対リスク0.78)することが示されています。

ただし、「除菌すれば胃がんのリスクがゼロになる」わけではありません。ここが大切なポイントです。

除菌する「前」にすでに胃の粘膜に萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん:胃の粘膜が薄くなってしまった状態)や腸上皮化生(ちょうじょうひかせい:さらに進行した粘膜の変化)が起きていると、除菌後もがんのリスクは残り続けます。このため、「除菌したから定期的な胃カメラは不要」ではなく、除菌後も状態に応じた定期的な確認が必要なのです。

除菌の効果を高めるために、「なるべく早く感染を確認し、陽性なら早めに除菌する」ことが、現在の専門家の共通見解です。日本ヘリコバクター学会の2024年改訂ガイドラインでも、この考え方が明確に打ち出されています。

3. ABC検診とは何か?─判定別の意味を正しく理解する

会社での健診や人間ドックで「ABC検診」「胃がんリスク検診」という検査を受けたことがある方も多いと思います。これはピロリ菌の抗体検査(ピロリ菌に感染しているかを調べる血液検査)と、ペプシノゲン検査(胃粘膜の萎縮の程度を調べる血液検査)を組み合わせた検査で、胃がんのリスクをA〜Dの4段階で分類するものです。

A判定:ピロリ菌なし・萎縮なし

胃がんリスクが最も低いグループです(ピロリ菌に感染したことがない真のA群と、すでに除菌済みの方が区別できないという弱点があります)

B判定:ピロリ菌あり・萎縮なし

感染はあるが、まだ粘膜の傷みが少ない段階で、除菌治療を検討するタイミングです

C判定:ピロリ菌あり・萎縮あり

感染に加えて粘膜の萎縮が進んでいる状態で、除菌治療と定期的な胃カメラが必要です

D判定:ピロリ菌なし・萎縮あり

かつて感染していたピロリ菌が今は陰性(過去に除菌した、または自然消滅した)ですが、萎縮が残っているため胃がんリスクは依然として高く、定期的な胃カメラが必要です

「B判定だったけど症状がないからそのままにしている」という方は、ぜひ一度ご相談ください。除菌治療は内服薬(抗菌薬と胃酸を抑える薬の組み合わせ)を用いて1週間程度で完了するシンプルな治療です。

4. 除菌治療の最新情報─P-CABの登場で成功率が上がった

ピロリ菌の除菌治療は、2種類の抗菌薬と胃酸を抑える薬を1週間内服するものです。

以前は胃酸抑制薬として「PPI(プロトンポンプ阻害薬)」が使われていましたが、2024年の日本ヘリコバクター学会ガイドライン改訂版では、「P-CAB(ピーキャブ:カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)」を用いた一次除菌治療がPPIよりも除菌成功率が高いとして推奨されるようになりました。P-CABはPPIよりも速く・強く・安定して胃酸を抑えることができるため、抗菌薬がより効果的に作用します。

一次除菌(初めての除菌治療)の成功率は現在80〜90%以上とされており、もし一次除菌に失敗した場合でも、抗菌薬の組み合わせを変えた二次除菌(にじじょきん)で多くの方が成功します。

除菌が成功したかどうかは、治療が終了してから4〜8週間後に尿素呼気試験(にょうそこきしけん:息を吐いて調べる検査)や便中抗原検査(べんちゅうこうげんけんさ)で確認します。血液検査(抗体を測定する)は除菌後も長期間陽性が続くため、除菌の判定には使用しません。

5. 胃カメラはいつ受けるべきか─「必ず一度は内視鏡で確認する」ことが原則

ピロリ菌陽性と分かった場合、除菌治療に進む前に胃カメラ検査による確認が必要です。これは医学的な理由と、保険診療上の理由の両面があります。

保険診療上の理由

現行の保険ルールでは、内視鏡検査でピロリ菌感染胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍などが確認された方にかぎり、保険適用で除菌治療を受けることができます。健診のABC検診でB・C判定が出ていても、内視鏡検査なしで保険を使って除菌治療を行うことはできません。

医学的な理由

医学的にも、胃カメラ検査には大切な役割があります。

一つ目は、胃の粘膜の状態を直接確認することです。萎縮性胃炎(いしゅくせいいえん)や腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)がどの程度進んでいるかを内視鏡で確認することで、除菌後の経過観察の間隔を適切に設定できます。血液検査だけではこの情報は得られません。

二つ目は、除菌前の病変の見逃し防止です。ピロリ菌陽性の方の胃には、胃潰瘍・胃がんの初期病変などが隠れている場合があります。除菌前に一度内視鏡で確認しておくことで、大切な病変を見逃さずに済みます。実際、「健診でピロリ菌陽性と言われて受診したら、胃の早期がんが見つかった」というケースも珍しくはありません。

これらを総合すると、内視鏡検査を受けるタイミングは、主に以下のようになります。

・ABC検診でB・C・D判定だった場合:保険適用での除菌治療や経過観察のために、まず胃カメラ検査が必要です

・除菌後の経過観察として:特に萎縮・腸上皮化生がある方は、除菌後も1〜3年ごとの定期的な胃カメラ検査が推奨されます

・症状がある場合:胃痛・胃もたれ・吐き気・体重減少・黒い便などがある場合は早めに受けましょう

「胃カメラは苦しい」という印象をお持ちの方も多いですが、当院では細径内視鏡(鼻からも対応可能)と、ご希望の方には鎮静剤を使って、できる限り苦痛の少ない検査を心がけています。「ピロリ菌陽性と言われたけれど、どうすればいいか分からない」という方も、まずはご相談ください。

6. まとめ

ピロリ菌は「症状がないから放置してよい」菌ではありません。早めの感染確認・除菌治療・その後の適切な経過観察が、胃がんを防ぐための最善の方法です。

3点を覚えておいてください。

①ピロリ菌は日本人の胃がんの原因の90%以上を占め、除菌で胃がんリスクを約36%下げられる

②ABC検診のB・C・D判定の方は、除菌治療や定期的な胃カメラ検査が必要

③除菌後に安心して胃カメラを受けなくなるのは危険であり、特に萎縮がある方は定期的な経過観察を受けましょう

「ピロリ菌について相談したい」「ABC検診でB判定だったけどそのままにしている」「胃カメラを受けたいが怖い」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

引用文献

1. 日本ヘリコバクター学会 H. pylori感染の診断と治療のガイドライン2024改訂版(一般公開は2016年改訂版までです)
2. Ford AC, Yuan Y, et al. Eradication Therapy to Prevent Gastric Cancer in Helicobacter pylori–Positive Individuals: Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials and Observational Studies. Gastroenterology. 2025;169(2):261-276.
3. Chey WD, Howden CW, et al. ACG Clinical Guideline: Treatment of Helicobacter pylori Infection. Am J Gastroenterol. 2024;119(9):1730-1753.

TOP