〒980-0021宮城県仙台市青葉区中央二丁目1番5号 青葉21ビル 3階
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逆流性食道炎・バレット食道
逆流性食道炎とは、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流し、食道に炎症を起こすような病気です。よくある症状として、胸の焼けるような不快感（胸やけ）や酸っぱいものが上がってくる感じ（呑酸：どんさん）があります。しかし、中には典型的な症状がなく、「喉の違和感」や「咳」など、一見すると食道とは関係ないような症状で悩まれる方も少なくありません。
ご自身の症状が逆流性食道炎によるものか悩ましい場合や、他の医療機関で原因がはっきりしない場合など、一度は消化器内科を受診し、胃カメラ検査による精密検査をお勧めします。当院では、内視鏡専門医による丁寧な検査で、正確な診断へと導きます。
逆流性食道炎の症状は多岐にわたります。典型的な胸焼けや呑酸などの症状のほか、以下のような症状が見られることもあります。
このような症状があると、消化器内科だけでなく、耳鼻咽喉科・呼吸器内科・循環器内科など、どこで診察を受けるべきか迷われるかもしれません。当院では、必要に応じて各科とも連携しながら、総合的に診断や治療を行います。
逆流性食道炎の原因として、以下のようなものが挙げられます。
逆流性食道炎の主な原因の一つに「腹圧の上昇」があります。特に肥満は腹圧を上昇させるため、胃の内容物が食道へ逆流しやすくなります。肥満以外にも、妊娠によるお腹の圧迫、きつい衣服の着用、重いものを持ち上げる動作なども腹圧を高め、胃酸の逆流を引き起こします。
胃と食道の間で「下部食道括約筋（LES）」という筋肉が締めつけることで、胃からの逆流を防いでいます。しかし、この筋肉が何らかの原因で緩むと、逆流が起こりやすくなります。
食道裂孔ヘルニア
肥満や加齢、姿勢の悪さなどにより、通常はお腹側にある胃の一部が横隔膜の穴（食道裂孔）から胸側にはみ出した状態です。これによりLESの締まりが悪くなり、逆流が起こりやすくなります。
一過性LES弛緩
アルコールや高脂肪食の摂取などが引き金となり、一時的にLESが緩んでしまう状態です。
食道や胃の運動機能が低下すると、食べ物や胃酸がスムーズに排出されないため、胃に長く停滞しやすくなります。これにより逆流しやすくなり、逆流性食道炎を引き起こします。
辛い食べ物や脂っこい食べ物の過剰摂取、不規則な食生活、ストレスなどは、胃酸の過剰分泌を引き起こすことがあります。胃酸が多くなると、逆流した際に食道粘膜のダメージは強く現れ、症状が悪化しやすくなります。
逆流性食道炎の原因で挙げた通り、体型や日々の生活習慣が発症に大きく影響しています。特に、以下のような方はリスクが高いと考えられます。
肥満気味の方
腹圧が上がり、胃酸の逆流を引き起こしやすくなります。
猫背など
姿勢が悪い方
腹圧が上がり、胃酸の逆流を引き起こしやすくなります。
飲酒や喫煙の
習慣がある方
食道と胃の間で逆流を防いでいる筋肉（下部食道括約筋）の機能を低下させます。
辛いものや
脂っこい食事を好む方
胃酸の分泌を促進します。
早食いをする方
食べ物が胃に長時間留まりやすくなり、逆流のリスクが高まります。
夕食を摂る時間が
遅い方
就寝前に胃酸が逆流しやすくなります。
ストレスが多い方
ストレスは胃腸の働きを悪くして、症状を悪化させます。
逆流性食道炎を確定診断するためには、胃カメラ検査が最も有効です。胃カメラ検査で食道の炎症の程度や範囲を直接確認し、ロサンゼルス分類と呼ばれる国際的な基準に基づいて、粘膜の損傷の度合いを評価します。また、喉の赤みや腫れ、胃の内容物の状態なども同時に確認できます。当院では、内視鏡専門医が負担を最小限に抑えながら丁寧な検査を行い、それぞれの状態に合わせた治療法をご提案します。
根本的な生活習慣の改善がまず重要ではありますが、症状を早く和らげるために、飲み薬による治療が行われます。当院では、一人ひとりのライフスタイルに合わせたきめ細かな生活指導とともに、効果的な薬物療法を組み合わせて、症状の改善を目指します。
酸分泌抑制薬
胃酸の分泌を強力に抑える薬として「プロトンポンプ阻害薬（PPI）」や「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー（P-CAB）」が第一選択薬となります。軽症の場合は、症状がある時だけ服用する「オンデマンド療法」を行うこともありますが、重症や症状を頻繁に認める場合は、毎日継続して服用する「維持療法」が一般的です。これらの薬は非常に効果が高いですが、長期に使用する場合の副作用も考え、その方の状態に合わせた適切な処方を心がけています。
消化管運動改善薬
胃の内容物が逆流して起こるタイプの逆流性食道炎には、胃や食道の運動機能を高め、逆流そのものを抑制するタイプの薬が有効です。これらの薬は、酸分泌抑制薬と組み合わせて処方されるケースが多く、より効果的な症状の改善を目指します。
漢方薬
喉の違和感が強いタイプや、口の中に苦いものが込み上げてくるような逆流性食道炎には、漢方薬の併用が有効な場合もあります。その方の体質や症状に合わせ、西洋薬と漢方薬の最適な組み合わせをご提案します。
防御因子増強薬
胃酸による攻撃因子と食道粘膜の防御因子のバランスが崩れることも、症状を悪化させる一因となります。胃酸を抑える薬だけで十分な効果が得られない場合、食道粘膜の防御機能を高める薬を併用することで、症状の改善が期待できます。
バレット食道は、慢性的な逆流性食道炎が続くことで、食道の下部にある細胞が、胃に近いタイプの細胞（円柱上皮）に置き換わった状態を指します。通常、食道には胃酸が存在しませんが、胃酸が繰り返し逆流すると、食道は自身を胃酸から守ろうと、このような細胞の変化を起こします。この変化は、一見すると適応のように思えますが、置き換わった細胞は不安定であり、「バレット食道がん」と呼ばれる食道がんへ進行するリスクがあるため、注意が必要です。中でもバレット食道ががん化するリスクと特に関連が深いのは、肥満と喫煙です。
バレット食道の診断は、逆流性食道炎と同じく、胃カメラ検査で行います。食道粘膜の変化を直接確認し、疑わしい部位があれば、組織を採取（生検）して病理検査を行うこともあります。バレット食道の長さは、がん化のリスクと密接に関連しています。バレット食道となった粘膜の長さが2倍になると、がん化のリスクは約1.7～2.9倍に増加するとされています。粘膜の長さが3cm未満の「SSBE（ショートバレット）」と3cm以上の「LSBE（ロングバレット）」とに分け、LSBEの場合はより厳重な経過観察が推奨されます。
当院では、早期発見と早期治療のために、定期的な胃カメラ検査をお勧めしています。残念ながら、現在のところバレット食道自体に保険適用の治療法はありません。しかし、さらなる状態の悪化を防ぐために、逆流性食道炎と同じく、生活習慣の指導が行われます。
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