2026年4月07日

こんにちは。仙台駅前でIBD(炎症性腸疾患)診療と内視鏡診療に力を入れている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室空間で、大学病院レベルの専門的な治療をスムーズに受けていただけるクリニックを目指しています。
高度な治療(アドバンスド・セラピー)をお薬の仕組みごとに解説したシリーズの第1弾「抗TNF抗体製剤」、第2弾「JAK阻害薬」、第3弾「抗インテグリン抗体製剤」、第4弾「抗IL-12/23抗体製剤」に続き、今回の第5弾では現在最も勢いがある「抗IL(インターロイキン)-23抗体製剤」を取り上げます。具体的には、ミリキズマブ(オンボー®)、リサンキズマブ(スキリージ®)、グセルクマブ(トレムフィア®)というお薬です。
過去の記事をまだご覧になっていない場合は、「潰瘍性大腸炎治療の全体像」や「クローン病治療の全体像」を読んでもらってから、各論である「高度な治療(アドバンスド・セラピー)」に進んでくださいね。
過去記事:潰瘍性大腸炎の治療を総括する:基本の5-ASA製剤から最新治療までのステップ
過去記事:クローン病の治療を総括する:早期の「徹底管理」が未来を分ける理由
過去記事:薬の仕組みを知ろう(①抗TNF抗体編)
過去記事:薬の仕組みを知ろう(②JAK阻害薬編)
1.「応援要請の合図」であるIL-23だけをピンポイントで抑える
前回ご紹介したように、腸という現場(戦場)で、暴走した免疫細胞(兵士)たちが炎症(火事)を起こす際に、「応援部隊を呼ぶための合図」がIL-12(インターロイキン12)とIL-23(インターロイキン23)でした。
抗IL-12/23抗体であるウステキヌマブは、このIL-12とIL-23の両方を抑えるお薬でした。一方で、今回の抗IL-23(p19)抗体は「狙い方」が異なり、IL-23だけをピンポイントで抑えるお薬となります。
近年の研究で、腸の炎症において本当に悪さをしているのはIL-23であることが分かってきました。IL-23だけをピンポイントで抑えることで、より効率的に、かつ安全に炎症を鎮めることが期待されてます。
ちなみに、IL-12はp40とp35という2つのサブユニットで構成され、IL-23はp40とp19という2つのサブユニットで構成されています。両方に共通するp40を抑えるのが「ウステキヌマブ=抗IL-12/23(p40)抗体」であり、p19を抑えるのが「抗IL-23(p19)抗体」というわけです。
2. クローン病(CD)で高まる存在感
実は今、クローン病の治療において、この抗IL-23抗体製剤の評価が非常に高まっています。
高い継続率
活動期に炎症を鎮めるだけでなく、その後も長く使い続けられる患者さんが多いのが特徴です。長らく主役であった抗TNF抗体が無効になってきた方にも、高い有効性が示されています。
安全に使用できる
有効性だけでなく、安全性でも優れており、高齢の方や合併症が心配な方にも相談しやすいお薬です。
このような特徴から、2025年に発表された海外の最新ガイドライン(AGAガイドライン)では、クローン病においてウステキヌマブよりもリサンキズマブなどの抗IL-23抗体製剤を優先的に勧めるという序列が付けられています。抗IL-23抗体製剤の存在感が増してきていると言えます。
もちろん、日本の最新の治療指針では、各薬剤は「横並び」であり、患者さんの背景(合併症の有無や妊娠の希望、通院頻度など)に合わせて選択します。しかし、特にクローン病において「より高い効果を、より長く維持できる」という点で、抗IL-23抗体製剤は頼れるエース候補になっています。
3. 潰瘍性大腸炎(UC)でも「安定感」が魅力
潰瘍性大腸炎においても、ミリキズマブ、リサンキズマブ、グセルクマブは頼もしい選択肢です。
ステロイド(一時的に火を消す強い薬)から離れられない「ステロイド依存」の状態にある患者さんにとって、これらの新しい薬へ早めに切り替えることで、腸の健康を長期的に守ることに繋がります。
ただし、クローン病とは異なり、「ウステキヌマブと比較してどちらが優先されるか」については、まだデータが少ない状態です。これからデータが蓄積してくると思われます。
4. 当院での治療:患者さんのご希望に合わせて
当院では、ここまでお話ししたような最新の知見をアップデートしながら、患者さん一人ひとりの「腸の状態」に合わせて最適なお薬を提案しています。
ミリキズマブ、リサンキズマブ、グセルクマブの3剤は、主に点滴で始めますが、その回数や1回あたりの時間は異なります。点滴のあとは皮下注射に移行しますが、病院で投与するものだけでなく、処方されて自宅で打つものもあります。また、調子が少し悪くなった場合に、追加投与(レスキューと言います)ができるものもあります。
当院では、患者さんのご希望に沿うお薬を一緒に選び、待合いから診察・投与まで、同じ個室で完結するスタイルになっています。リラックスした環境で治療を受けていただけます。
まとめ
アドバンスド・セラピーは選択肢が増えた分、どのお薬が自分に合うのか判断が難しくなっています。
「効果の早さを優先したい」「とにかく安全性を重視したい」「通院回数を減らしたい」など、あなたのライフスタイルや目標に合わせて、最適な治療の計画を立てていきましょう。
引用文献
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