【IBD専門医Q&A】免疫抑制療法中にワクチンを打っても大丈夫?インフルエンザや帯状疱疹ワクチンについて解説します|仙台駅の消化器内科・胃カメラ・大腸カメラ|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

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【IBD専門医Q&A】免疫抑制療法中にワクチンを打っても大丈夫?インフルエンザや帯状疱疹ワクチンについて解説します

【IBD専門医Q&A】免疫抑制療法中にワクチンを打っても大丈夫?インフルエンザや帯状疱疹ワクチンについて解説します|仙台駅の消化器内科・胃カメラ・大腸カメラ|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

2025年12月15日

こんにちは。仙台駅前にある「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。
当院は、炎症性腸疾患(IBD)診療と内視鏡検査・治療を専門とし、患者さんがカフェのようにリラックスして過ごせる空間づくりを心がけています。全室個室対応ですので、診察や採血の際も、周囲を気にせずゆったりとお過ごしいただけます。

さて、今回のテーマは「IBD治療中のワクチン接種」についてです。
潰瘍性大腸炎やクローン病の治療では、ステロイド、免疫調節薬(イムランなど)、生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ、エンタイビオ、ステラーラなど)、JAK阻害薬(ゼルヤンツ、リンヴォックなど)といった、免疫の働きを抑えるお薬を使用することがあります。

これらのお薬は、腸の炎症を抑えるために非常に強力な味方ですが、一方で「感染症にかかりやすくなる」という側面も持っています。だからこそ、ワクチンで防げる病気はしっかり対応していくことが大切です。
今日は、治療中に「打てるワクチン」と「打てないワクチン」、そして特に注意したい「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」についてお話しします。

1. 治療開始「前」のチェックが一番大切です

まず、これから免疫を抑える治療を始める予定の方へ。
治療をスタートする前に、これまでにどんな感染症にかかったか、どんなワクチンを打ったかを確認することが非常に重要です。

治療開始前にチェック(スクリーニング)する代表的な感染症

・B型肝炎:過去に感染したことがある場合、免疫抑制療法によってウイルスが再活性化(再び暴れ出すこと)するリスクがあります。
・結核:結核菌が体内に潜んでいないか、レントゲンや血液検査で確認します。
・麻疹(はしか)・風疹・水痘(水ぼうそう)・ムンプス(おたふく風邪):これらに対する抗体(免疫)があるかを確認します。もし抗体がなければ、治療を始める前にワクチン接種をお勧めすることがあります。

当院では、治療開始前に必要なスクリーニング検査を確実に行い、安全を確認した上で治療を開始しています。

2. 「生ワクチン」は治療中はNGです

ここが一番のポイントです。ワクチンには大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があります。
免疫を抑えるお薬を使用している間は、「生ワクチン」の接種は原則としてできません(禁忌)。
生ワクチンは、弱毒化しているとはいえ生きたウイルスや細菌を使うため、免疫が下がっている時に打つと、その病気自体を発症してしまう危険性があるからです。

【代表的な生ワクチン】(治療中は打てません!)

・麻疹(はしか)
・風疹(ふうしん)
・水痘(水ぼうそう)
・ムンプス(おたふく風邪)
・BCG(結核)

もしこれらのワクチンが必要な場合は、治療を開始する1ヶ月ほど前までに接種を済ませるか、お薬を休薬して一定期間(通常3ヶ月程度)空けてから接種する必要があります。
このタイミングの判断は専門的な知識が必要ですので、必ず主治医にご相談ください。当院では、特殊なケースも含めて、対応が可能です。

3. 「不活化ワクチン」は積極的に打ちましょう

一方で、ウイルスや細菌の病原性をなくして作った「不活化ワクチン」は、免疫抑制療法中でも安全に接種できます。
むしろ、感染した際の重症化を防ぐために、積極的な接種が推奨されています。

【代表的な不活化ワクチン】(治療中でも打てます!)

・インフルエンザワクチン: 毎年、冬の流行前に接種しましょう。
・新型コロナウイルスワクチン: 重症化予防に有効です。
・肺炎球菌ワクチン: 肺炎の予防に役立ちます。

※免疫抑制療法中に接種すると、ワクチンの効果(抗体のつきやすさ)が少し弱まる可能性も報告されています。それでも、重症化を防ぐメリットの方がはるかに大きいとされています。

4. IBD患者さんが特に注意したい「帯状疱疹」

最近、テレビCMなどでもよく耳にする「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」。
子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経に潜んでいて、疲れや加齢、そして免疫抑制療法などをきっかけに再活性化し、痛みを伴う発疹(ほっしん)が出る病気です。

実は、IBD患者さんは、一般の方に比べて帯状疱疹のリスクが高いことが分かっています。さらに、JAK阻害薬(ゼルヤンツ、リンヴォックなど)や抗TNFα抗体製剤を使用している場合や、ご高齢の方では、特に注意が必要です。

帯状疱疹のワクチンには2種類ありますが、免疫抑制療法中の方は不活化ワクチンである「シングリックス(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン)」を選ぶ必要があります。これは非常に高い予防効果があり、治療中でも安全に使用できます(生ワクチンは打てません!)。当院でも対応可能ですので、気になる方はお声がけください。

5. 安心して治療を続けるために

「感染症が怖いから、治療をしたくない」
そう思われるお気持ちもよく分かります。しかし、IBDの炎症を放置すること自体も、体に大きな負担をかけます。
大切なのは、「敵(感染症のリスク)を知り、正しく防ぐ」ことです。

感染症リスクに配慮した当院の診療の工夫

・完全個室での診療:受付後は個室にご案内し、診察も同じ個室で完結するため、他の方との接触を最小限に抑えられます。
・移動の少ないケア:看護師がカートで各個室を回って採血や投薬を行うため、体調が優れない時も安心です。
・専門医による管理:適切なワクチンスケジュールをご提案し、万が一感染症にかかった際の対応も行います。

「自分はこのワクチンを打ってもいいのかな?」「帯状疱疹が心配」など、少しでも疑問があれば、診察室で遠慮なくご相談ください。
皆様が安心して治療を続けられるよう、全力でサポートいたします。

引用文献

1. Ishige T, Shimizu T, et al. Expert consensus on vaccination in patients with inflammatory bowel disease in Japan. J Gastroenterol. 2023;58(2):135-157.
2. Caldera F, Kane S, et al. Executive Summary of the 2024 American Gastroenterological Association Clinical Practice Update: Healthcare Maintenance Checklist for Inflammatory Bowel Disease. Clin Gastroenterol Hepatol. 2025;23(5):695-706.
3. Farraye FA, Melmed GY, et al. ACG Clinical Guideline: Preventive Care in Inflammatory Bowel Disease. Am J Gastroenterol. 2025;120(7):1447-1473.

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