2025年12月23日
こんにちは。仙台駅前にある「せんだい駅前 消化器 IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。 当院は、炎症性腸疾患(IBD)診療と内視鏡検査・治療を専門とし、患者さんがカフェのようにリラックスして過ごせる空間づくりを心がけています。全室個室対応で、診察や採血の際も、医師と看護師が皆様のお部屋に伺います。体調が優れない時も移動の負担なく受診していただけるのが当院の特徴です。
さて、今回のテーマは、IBD治療の歴史あるお薬「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」についてです。
プレドニンやプレドニゾロンといった名前で処方されるこのお薬。 「顔が丸くなる(ムーンフェイス)」「骨が弱くなる」といった副作用のイメージから、不安を感じる患者さんも少なくありません。
今日は、このステロイドを「いかに安全に使うか」、そして「いつまで使うべきなのか」について、最新の知見を交えてお話しします。
1. 潰瘍性大腸炎とクローン病では「役割」が違ってきています
世界的には、どちらの病気に対しても「まずはステロイド」という時代がありました(日本では、クローン病に栄養療法も第一選択でした)。しかし、治療薬が進歩した現在、両者におけるステロイドの立ち位置は少しずつ変わってきています。
潰瘍性大腸炎の場合:今でも「火消し」の主役
中等症以上の活動期(症状が強い時期)には、ステロイドは現在でも「標準治療(スタンダード)」です。 燃え盛る炎症を一気に鎮める「強力な消火器」として、非常に頼りになるお薬です。まずはステロイドでしっかりと火を消し、その後の良い状態を別のお薬(5-ASA製剤など)で維持するのが基本戦略です。
クローン病の場合:主役は「Advanced Therapy」へ
一方で、クローン病に関しては事情が少し異なります。
近年の研究やガイドラインでは、ステロイドよりも「Advanced Therapy(アドバンスド・セラピー)」と 呼ばれる、生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ、エンタイビオなど)や JAK阻害剤(リンヴォックなど)を、早い段階から積極的に使う流れが強まっています。
クローン病では腸管のダメージが蓄積しやすいため、ステロイドで一時的に炎症を鎮めるよりも、効果が高く粘膜をしっかり治せるお薬を早めに使うことが推奨されているのです。
2. 「3ヶ月以内」が安全の目安です
ステロイドで一番大切なルール。それは「ダラダラと長く続けないこと」です。
ステロイドは、短期決戦で使う分には、副作用のリスクはそれほど高くありません。一方で、ダラダラと長期に使用すると、感染症にかかりやすくなったり、糖尿病や骨粗鬆症などの リスクが上がったりします。
当院では、治療指針に基づき、「ステロイドの使用は 3ヶ月以内を目処に中止する」ことを心がけています。
これを「ステロイドフリー寛解」と呼びます。 もし、ステロイドを減らすと症状が悪化してしまう(ステロイド依存)場合や、ステロイドの効果が不十分な(ステロイド抵抗)場合は、無理に続けず、速やかに次の治療(Advanced Therapyなど)へ切り替える判断をします。
3. 「副作用の少ないステロイド」もあります
「やっぱり身体への副作用が心配…」
そのような場合には、ブデソニド(ゼンタコートやコレチメント)という選択肢もあります。 これらは、腸で溶けて局所的に作用し、吸収されても肝臓で速やかに分解されるため、全身への副作用が少ないという特徴があります。
従来のステロイドほどの強さはないものの、軽症〜中等症の方には非常に良い選択肢となります。
4. 安全に治療を続けるために
ステロイドを使用する際は、特に「感染症」への注意が必要です。 肺炎などを防ぐため、必要に応じて予防薬(バクタなど)を併用することもあります。また、当院は 専門医が常駐しておりますので、体調の変化があればすぐに対応できる体制を整えています。
ステロイドは「怖い薬」ではありません。「使いどころとやめどき」を間違わなければ、患者さんの苦 痛を速やかに取り除いてくれる「頼れる味方」です。
当院では、一人ひとりの病状に合わせて、ステロイドを使うべきか、それとも早めに生物学的製剤 などへステップアップすべきかを慎重に判断します。 また、点滴などの治療が必要になった場合でも、リラックスできる個室や、鎮静後のリカバリーに も使える安静室をご用意しております。
「今の治療で本当にいいのかな?」「ステロイドがなかなか減らせない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
引用文献
1. 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和6年度改訂版
2. Hirayama D, Hyodo S, et al. Trends in steroid use and cumulative steroid dose in patients with inflammatory bowel disease in Japan. J
Gastroenterol. 2024;59(5):389-401.
3. Gordon H, Minozzi S, et al. ECCO Guidelines on Inflammatory Bowel Disease 2024. J Crohns Colitis.2024;18(10):1531-1555.