2026年3月25日

こんにちは。仙台駅前でIBD(炎症性腸疾患)診療と内視鏡診療に力を入れている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室空間で、大学病院レベルの専門的な治療をスムーズに受けていただけるクリニックを目指しています。
これまで、潰瘍性大腸炎やクローン病の最新治療についてシリーズでお話ししてきました。今回は、それらの治療とセットで考えなければならない「大腸カメラ検査」の重要性について、最新の知見を整理してみましょう。
過去の記事をまだご覧になっていない場合は、「潰瘍性大腸炎治療の全体像」や「クローン病治療の全体像」もご覧くださいね。
過去記事:潰瘍性大腸炎の治療を総括する:基本の5-ASA製剤から最新治療までのステップ
過去記事:クローン病の治療を総括する:早期の「徹底管理」が未来を分ける理由
1. IBD患者さんと大腸がんの「いま」
結論からお伝えすると、潰瘍性大腸炎や大腸に病変のあるクローン病の方は、一般の方に比べて大腸がんを発症するリスクが高いことは事実です。
かつて、IBD患者さんにおける非常に高いリスクが示され、多くの患者さんを不安にさせました。しかし、ご安心ください。最近の報告(欧州や米国のガイドラインなど)では、高度な治療薬(アドバンスド・セラピー)の普及によって腸の炎症をしっかり抑えられるようになったため、以前言われていたほどリスクは高くないことが示されています。
それでも、IBDを有さない一般の方と比較すれば、リスクは依然として存在します。特に、炎症の範囲が広い「全大腸炎型」の方や、診断から10年、20年と経過している方は、より慎重な姿勢が求められます。
2. 「症状がない=安心」ではないのがIBDのがん
「お腹も痛くないし、便も普通になっている。だから、がんは大丈夫だろう。」
実は、ここが最も注意すべきポイントです。
一般的な大腸がんは、ポリープが徐々に大きくなってがん化しますが、IBDに伴うがんは「平らな粘膜から突然発生する」ことがあり、しかも「炎症による粘膜の凸凹に隠れて見つけにくい」という特徴があります。
さらに、最新のアメリカ消化器病学会(ACG 2025年)のガイドラインなどでも強調されているように、お腹の症状がない「臨床的寛解(りんしょうてきかんかい)」の状態であっても、大腸カメラで観察した時に炎症が残っていれば、がんのリスクは高いままなのです。
3. 「サーベイランス」という名の守りの検査
将来のがんを防ぐための定期的な検査を、専門用語で「サーベイランス」と呼びます。本邦や世界の主要なガイドライン(日本・ACG・ECCO)では、以下のような共通した考え方が示されています。
いつから始める?
発症(あるいは症状が出た時)から8〜10年が経過したら、定期的なカメラ検査を始めるべきです。
どれくらいの頻度で?
腸の炎症の度合いや、これまでの経過によりますが、1〜3年ごとの検査が推奨されています。
リスクが高い場合は?
炎症がくすぶっている方や、原発性硬化性胆管炎(PSC)という合併症をお持ちの方は、年1回の検査が必須となります。
4. 最新の治療目標である「内視鏡的な治癒」
現在のIBDの治療目標は、症状を無くすことだけではありません。大腸カメラ検査で確認して、粘膜がツルツルのきれいな状態(粘膜治癒:ねんまくちゆ)になることを目指す(これをTreat to Target戦略=目標達成に向けた治療戦略と言います)が世界標準です。
内視鏡で炎症を「ゼロ」に近づけることができれば、将来のがんのリスクを劇的に下げ、手術を回避できる可能性が高まります。定期的なカメラ検査は、「今の治療が、将来のあなたの命を守るのに十分かどうか」を判定する「通知表」のようなものです。
また、「大腸カメラは辛いもの」というトラウマで、足が遠のいている方もいらっしゃるかもしれません。実は、癒着などで本当に難しいケースはごく一部であり、多くの場合は「挿入の技術(腸を引き伸ばさない工夫)」で痛みを大幅に抑えることが可能です。当院のこだわりについては、以前の記事もご覧くださいね。
過去記事:大腸カメラ検査はなぜ痛い?「体質のせい」にされないための本当の知識
5. まとめ
IBD患者さんにとって、カメラ検査は「嫌な行事」ではなく、「普通の日常生活を一生守り続けるための投資」です。
仙台駅前のリラックスできる環境で、私たちと一緒に「炎症ゼロ」の健康な未来を目指してみませんか?気になることがあれば、いつでも診察室でお話ししましょう。
引用文献
1. 日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD) 診療ガイドライン2020(改訂第2版)
2. Gordon H, Biancone L, et al. ECCO Guidelines on Inflammatory Bowel Disease and Malignancies. J Crohns Colitis. 2023;17(6):827-854.
3. Rubin DT, Ananthakrishnan AN, et al. ACG Clinical Guideline Update: Ulcerative Colitis in Adults. Am J Gastroenterol. 2025;120(6):1187-1224.