便秘症
便秘症

便秘症の原因として、何らかの重大な病気が隠れていることもあります。以下のような便秘の症状があれば、お気軽に当院までご相談ください。
便秘は日常的な不調と捉えられることが多いと思います。その一方で、重大な病気の症状として、便秘が引き起こされていることもあります。注意が必要なのは、大腸がんにより生じている便秘です。早急に適切な治療を受ける必要があり、放置すると命に関わることもあります。
下記のような症状やリスクを持つ方では、特に注意する必要があります。安易に下剤を服用すると、大腸穿孔(穴があく)を起こす可能性があり、市販薬の服用は控えてください。
腹部の手術を受けたことがある方では、癒着によって便秘があらわれていることもあります。また、消化器以外の病気でも、パーキンソン病・糖尿病・甲状腺機能低下症などによって便秘が引き起こされることもあります。抗精神薬や抗パーキンソン病薬など、腸の動きを抑える働きのある治療薬により、副作用として便秘が生じるていることも少なくありません。
便秘症の原因にはいくつかありますが、大きく分けると器質性便秘と機能性便秘に分けられます。大腸カメラ検査などを通じて、器質性便秘(大腸癌による狭窄など、腸の形や構造に異常があって便秘症が起こる)を否定できると、残るは機能性便秘(形や構造に異常はないものの、腸の動きに異常があって便秘症が起こる)となります。機能性便秘は、その症状やメカニズムから、主に排便回数減少型と排便困難型の2つのタイプに分類できます。
大腸の蠕動(ぜんどう)運動の機能が低下して起こるタイプで、女性や高齢者に多くみられます。腸管の緊張がゆるんで蠕動運動が低下することで、大腸内に便が長くとどまり、過剰に水分を吸収されて硬くなって排出が困難になります。従来の弛緩性便秘の多くが、このタイプに該当します。
そのほか、パーキンソン病や糖尿病など他の病気によるものや、腸の動きを抑える薬剤の副作用が原因となることもあります。また、ダイエットなどによる食事摂取量の減少や、食物繊維の摂取不足といった食習慣も、排便回数減少型便秘の原因となることもあります。
排便回数が減少し、便は硬く大きく、あるいはウサギの糞のようなコロコロとした便になることが多くみられます。薬物治療では、まずは便性状を柔らかくする薬を用いて排便を促していきます。
便が直腸まで降りてきても、そこで停滞したまま便意を起こさず、排出が困難になっているタイプです。従来の直腸性便秘の多くがこのタイプに該当します。便意を我慢する習慣によって生じることが多く、切れ痔などによる排便時の痛みのため、無意識に便意を我慢してしまうことで発症することもあります。
また、消化管は自律神経によってコントロールされていますが、ストレスなどにより自律神経のバランスが崩れると腸管が過剰に緊張し、便がうまく送られず排出が困難になる便秘もあります。従来の痙攣性便秘の多くが、このタイプに該当します。過敏性腸症候群の一症状として現れることもあります。
便形状を柔らかくする治療で症状が改善することもありますが、直腸の知覚が低下している場合や、肛門周辺の筋肉の協調運動に問題がある場合など、便形状を柔らかくするだけでは改善しない症例もあります。
便秘が続く場合、まずは大腸がんなどの重大な病気が無いことを、大腸カメラ検査でしっかり確認することが重要です。当院では、内視鏡専門医による質の高い検査を心がけております。不安の強い方には、希望に応じて鎮静剤を用い、うとうと眠った状態で受けることも可能です。
必要に応じてレントゲン検査・血液検査・超音波(エコー)検査なども行ない、原因をしっかり確かめた上で、適切な治療につなげています。
便秘の原因となる他の病気が場合は、まずその治療を行います。薬の副作用で生じている場合は、処方を見直しを行ないます。
他の病気が関与していない便秘の場合は、食事、運動不足、便意の我慢、ストレス、市販薬の長期服用など、多くの要因が複雑に絡み合っていることが多くあります。その場合でも、便秘のタイプを把握しながら、ライフスタイルに配慮した治療を相談したいと思います。
身体を動かすことで腸の働きも活発になるため、軽い運動を習慣的に行ないましょう。便意があったらすぐトイレに行く習慣を付け、水分をしっかり摂るよう心がけてください。食事は便秘を解消する要になりますので、食生活を見直しましょう。
水分や食物繊維をしっかり摂りましょう。腸内環境を整えるため、善玉菌になる乳酸菌を摂ることも有効です。栄養バランスに配慮しながら、3食を規則正しく摂りましょう。ダイエットで脂質の摂取を極端に制限してしまうことがありますが、便秘を解消するためには、脂質の適度な摂取が不可欠です。
食物繊維は消化されないため、便の量を増やし、排便を助けてくれます。食物繊維には、有害物質を吸着して体外に排出するというデトックス効果もあり、体調を整えるためにも重要です。また、糖分や脂質の吸収を遅らせるため、食後の血糖値の上昇がゆるやかになり、コレステロール値を抑制する効果も期待できます。
食物繊維は、水に溶ける水溶性と溶けない不溶性に分けられます。水溶性食物繊維は、ワカメなどの海藻やキノコ、納豆などに多く含まれており、便をやわらかくする効果があります。一方で、玄米や野菜は不溶性食物繊維を多く含み、便を硬くしやすい傾向があります。
便秘のタイプにより、適した食物繊維のとり方も変わってきますので、ご自身に適したバランスや摂り方を心がけることが重要です。
便を構成しているものとして、食物繊維や老廃物のほか、腸内細菌があります。
例えば、乳酸菌は腸内で糖を代謝して乳酸をつくります。乳酸によって弱酸性になると、善玉菌の増殖が促進され、悪玉菌の発生が抑制されます。善玉菌が増えることで便の量が増加し、スムーズな排便につながります。
腸内環境を整えるため、乳酸菌をしっかり摂ることが有効ですが、菌株によって効果が異なり、個人差もあります。また、乳酸菌はヨーグルトやチーズだけでなく、漬物やみそ、醤油などにも含まれており、和食や菜食でも十分に乳酸菌を摂ることができます。
便を柔らかくしてボリュームを出す薬が一番に検討されます。ただし、即効性は欠けるため、蠕動運動を活発にする薬もよく用いられていました。ただし、蠕動運動を活発にする薬は習慣性があり、耐性を生じて内服量が増えていくため、連用せずに屯用に留める必要があります。
最近では、作用機序や効果の現れ方が異なる新しい薬が登場し、市販薬では十分な効果が得られなかった方にも効果を期待できるようになっています。当院では、便秘のタイプやライフスタイルに合わせてきめ細かな処方を心がけていますので、どうぞお気軽にご相談ください。
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