アニサキスは、魚介類に寄生する「線虫」と呼ばれる寄生虫の一種です。私たちが一般的に「アニサキス」と呼んでいるのは、その幼虫を指しており、体長2~3cm程度の白く細長い形をしています。サバ・サンマ・アジ・イカ・サケ・カツオなどの魚介類の内臓や筋肉部分に寄生しており、これらの魚介類を人が生で食べることで、アニサキス症を発症します。
アニサキス症・ピロリ菌感染症
アニサキス症・ピロリ菌感染症

アニサキスは、魚介類に寄生する「線虫」と呼ばれる寄生虫の一種です。私たちが一般的に「アニサキス」と呼んでいるのは、その幼虫を指しており、体長2~3cm程度の白く細長い形をしています。サバ・サンマ・アジ・イカ・サケ・カツオなどの魚介類の内臓や筋肉部分に寄生しており、これらの魚介類を人が生で食べることで、アニサキス症を発症します。
胃アニサキス症
アニサキスに寄生された魚介類を食べてから、早ければ数時間以内に、遅くとも24時間以内に、激しい腹痛や吐き気などの症状で発症します。これは、アニサキスが胃壁に噛みつくことによって、局所的なアレルギー反応が引き起こされるためだと考えられています。症状の程度には個人差があり、全く症状が出ない方から、激しい腹痛・吐き気・高熱を伴う方もいらっしゃいます。胃カメラ検査でアニサキスを胃壁から摘出すると、比較的速やかに症状が改善します。当院では、胃カメラ検査によるアニサキス症の診断と摘出が可能です。
腸アニサキス症
アニサキス症のほとんどは胃アニサキス症ですが、稀にアニサキスが胃を通過して、腸の壁に入り込むことがあります。これを「腸アニサキス症」と呼びます。腸アニサキス症は、胃アニサキス症よりも遅れ、アニサキスに寄生された魚介類を食べてから半日~数日後に発症します。症状は胃アニサキス症と同様の激しい腹痛や吐き気が多いですが、小腸の腫れが強い場合は腸の詰まり(腸閉塞)を引き起こし、手術が必要になるケースもあります。
釣れた魚を
早めに処理する
ご自身やご家族が釣った魚を食べた後に、アニサキス症を発症して来院される方も多くいらっしゃいます。アニサキスは、魚が釣れた直後は内臓に寄生していることが多いのですが、魚が死んでから時間が経つと身の部分(筋肉)に移動してきます。そのため、釣れた魚の内臓をなるべく早く処理することで、アニサキス症のリスクを減らすことができます。
食べる前には
目視で確認する
アニサキスの幼虫は体長2~3cmであり、肉眼で確認することができます。実際にはくるっと丸まっていることが多いので、より小さく見えるかもしれません。食べる前に魚の身をよく確認し、しっかりと取り除くことでアニサキス症を予防できます。特に、生の魚介類を扱う際には、光にかざすなどして注意深く観察しましょう。
冷凍する
-20℃以下で24時間以上冷凍された魚は、アニサキスが死滅するため安全に食べられます。刺身などを食べる際には、一度冷凍された魚を選ぶことで、アニサキス症を効果的に回避できます。
加熱する
アニサキスは70℃以上で加熱することで死滅します。60℃の低温加熱の場合でも、1分以上は加熱処理を行うようにしてください。魚の身の奥にアニサキスが潜んでいる場合もありますので、中までしっかり熱を通すことが重要です。なお、お酢でしめてもアニサキスは死滅しません。しめ鯖などを食べる際には、特に注意が必要です。
ヘリコバクター・ピロリ(いわゆるピロリ菌)は、らせん状の形をした細菌で、胃の中に生息しています。通常、胃の中は強い胃酸が存在し、多くの細菌は生きていけません。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を分泌して自分の周りの胃酸を中和するため、過酷な胃の中でも生き延びることができます。ピロリ菌は主に口から感染すると言われており、衛生環境と深い関連があります。そのため、衛生環境が改善した現在では、感染の機会は減少しています。日本では、50歳以上ですと、感染している方の割合が高いとされています。
ピロリ菌に感染すると胃の粘膜に慢性的な炎症が引き起こされ、胃炎や胃・十二指腸潰瘍の原因となります。胃・十二指腸潰瘍の方は、除菌することで再発率を著しく下げることができます。また、胃がんとの関連性も指摘されており、早期の除菌治療が胃がんの予防に繋がると考えられています。
ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に慢性的な炎症が引き起こされ、「慢性胃炎」の状態になります。この状態が長く続くと、次第に胃粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」へと進行し、胃酸の分泌機能や胃の運動機能が低下します。そのため、胃の不快感(胃もたれ・吐き気)や食欲不振などの症状が現れます。ピロリ菌の感染は胃・十二指腸潰瘍の原因にもなり、ピロリ菌の感染率は、胃潰瘍で70~90%、十二指腸潰瘍で90~95%と報告されています。除菌治療を行うことで、胃・十二指腸潰瘍の予防につながります。
ピロリ菌の感染者は、未感染者に比べて胃がんリスクが5倍になるとの報告もあります。ピロリ菌の感染から年月が経過し、炎症が継続している期間が長い人ほどがんの発症リスクが高くなると言われています。そのため、なるべく早い段階でピロリ菌の有無を調べ、除菌治療を行うと胃がんの予防につながります。
ピロリ菌の有無を調べる検査には、大きく分けて胃カメラを使う方法と使わない方法があります。これらの検査を複数組み合わせ、総合的に判断することで、より正確な診断を行います。全ての検査で陰性であれば「ピロリ菌陰性」、いずれか一つでも陽性であれば「ピロリ菌陽性」と判定します。
迅速ウレアーゼ試験
ピロリ菌が分泌するアンモニアによる反応を試薬で調べます。
鏡検法
採取した組織を染色し、顕微鏡でピロリ菌の存在を確認します。
培養法
採取した組織を培養し、ピロリ菌が増えるかどうかを観察して判定します。
尿素呼気試験
検査用の薬を飲み、一定時間が経過したあとの息(呼気)に含まれるピロリ菌の反応を調べるもので、身体への負担が少なく、簡単で感度が高い検査です。
血液・尿検査
(抗体反応)
血液や尿を採取し、ピロリ菌に感染したことで体内に作られた抗体を調べます。
便中抗原検査
便中を採取してピロリ菌の抗原を調べるもので、身体への負担が少なく、お子さんでも受けやすい検査です。
1
医師による診断
次のような病気を、除菌治療の対象とします。胃カメラ検査でピロリ菌の生息が疑われる胃の粘膜を確認した場合は、ピロリ菌検査によって確定診断を行います。
除菌治療の対象となる病気
2
1次除菌
ピロリ菌の感染が確認された場合、2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制薬を、1日2回(朝晩)、7日間服用します。服用期間中に1日でも薬を飲み忘れると、期待する効果が得られない場合がありますのでご注意ください。この1次除菌で70~80%の方が除菌に成功するとされていましたが、新しい胃酸分泌抑制薬の登場で90%以上に改善しています。何事もなく除菌治療を行える方が多いですが、副作用として軟便や下痢がよく認められます。頻度は高くありませんが、味覚異常や肝機能異常なども認めます。気になる症状があれば、速やかにご来院ください。
3
1次除菌後の判定
1次除菌ののち、8週以上の間隔を空けて再度ピロリ菌の検査を行い、除菌が成功したか否かを確認します。再度除菌が必要と判定した場合は2次除菌を行います。
4
2次除菌
1次除菌後もピロリ菌の感染が認められた場合、2回目の除菌(2次除菌)を行います。1次除菌と同様に、7日間の内服を行ないますが、使用する抗生物質の種類を変更します。8週以上空けて判定を行いますが、2次除菌まで行うことで約95%の方が成功します。保険適用のある除菌は2次除菌までですが、2次除菌で不成功だった場合は、自費診療で3次除菌以降を行うことも可能です。
ピロリ菌の感染と胃がんは大きく関係しており、除菌治療を行うことで胃がんの発症リスクを下げることができます。ただし、除菌治療に成功しても、胃がんのリスクがゼロになったわけではありません。除菌後でも胃粘膜の萎縮は残り、もともとピロリ菌がいない方に比べると胃がんの発生率は高いとされています。
胃がんの原因はピロリ菌だけではなく、喫煙や食生活とも深く関係しています。除菌が成功してピロリ菌が陰性になっても、胃がんを早期に発見するために、1年に1回の定期的な胃カメラ検査をお勧めします。
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