〒980-0021宮城県仙台市青葉区中央二丁目1番5号 青葉21ビル 3階
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胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍は、なんらかの原因で胃や十二指腸の壁に傷がつき、粘膜がえぐれた状態を表します。胃や十二指腸は、口から入ってくる食べ物や消化液などの攻撃因子に常にさらされていますが、防御因子となる粘液を分泌して自分自身を守っています。何らかの原因でこの攻撃因子と防御因子のバランスが崩れると、粘膜の表面に傷がつき、傷が浅い状態の「びらん」や、さらに傷が深くなる「潰瘍」が形成されます。
胃・十二指腸潰瘍は、私たちの日常生活に潜む病気の一つです。多くの方が経験する胃の痛みや不快感の背後には、これらが隠れているかもしれません。当院では、胃・十二指腸潰瘍の原因を特定し、一人ひとりに合わせた最適な治療計画をご提案します。
胃・十二指腸潰瘍は、胃やみぞおちの不快感から、時に生命にかかわる症状まで、様々な形で私たちの身体にサインを送っています。以下のような症状に心当たりのある方は、決して放置せず、お気軽に当院までご相談ください。
腹痛
胃・十二指腸潰瘍でよくある症状は腹痛です。典型的には、胃潰瘍では食後に痛みが現れ、十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが起こり、食事によって一時的に痛みが和らぐと言われています。痛みは、みぞおちの「キリキリとした痛み」「重苦しい痛み」などさまざまであり、気になる場合は早めに専門医への受診をお勧めします。
胸やけや吐き気
胃酸が逆流するような胸やけ感や、ムカムカとした吐き気も潰瘍のサインであることがあります。潰瘍から少量の出血が見られる場合など、胸やけや吐き気などの症状を繰り返し認めることがあります。一般的な胸やけと区別がつきにくく、繰り返す場合は注意が必要です。
めまいやふらつき
潰瘍からの出血が比較的多い、あるいは少量の出血がゆっくり長く続くと、貧血が進行します。貧血が重度になると、立ちくらみやめまい、だるさといった症状が現れます。ただし、徐々に進行するため、気づきにくい点に注意する必要があります。健康診断で貧血を指摘された場合は、胃・十二指腸からの出血がないか、胃カメラ検査で確認することをお勧めします。
吐血
出血が急速かつ多量に起きた場合は、口から血液を吐いてしまう吐血が起こります。出血してから胃に溜まっていた時間により、鮮やかな赤色の血液から、コーヒーの残りカスのような黒っぽい血液まであります。これは緊急性の高い状態であり、直ちに医療機関を受診し、緊急の止血処置が必要です。
黒色便（タール便）
出血がゆっくり進んでいると、血液が胃酸で酸化して黒くなり、便がコールタールのように真っ黒になることがあります。便の臭いがいつもと違うことで気付くこともあります。タール便も吐血と同様に消化管からの出血を示唆する重要なサインであり、速やかに消化器専門医を受診してください。
胃・十二指腸潰瘍は、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。主な原因は、大きく分けて以下の3つに分類されます。それぞれの原因に合わせ、適切な診断と治療が不可欠です。
ヘリコバクター・ピロリ（いわゆるピロリ菌）は胃の粘膜に生息する細菌で、胃・十二指腸潰瘍の最大の原因として知られています。長期間にわたるピロリ菌感染は、胃の慢性の炎症を引き起こし、胃酸に対する粘膜の防御力を著しく低下させます。当院では、精度の高いピロリ菌の検査（内視鏡を用いた迅速ウレアーゼテスト、呼気試験など）を行い、感染が確認された場合は、積極的に除菌治療を行っています。除菌治療に成功すれば、潰瘍の再発リスクを大幅に低減できます。
近年増加傾向にあるのが、特定の薬剤の副作用によって引き起こされる潰瘍です。特に以下のものには注意が必要です。
非ステロイド性消炎鎮痛薬
（NSAIDs）
痛み止めとして広く用いられていますが、胃の防御因子を弱めます。
低用量アスピリン
心臓病や脳梗塞の予防のために広く用いられていますが、同じく胃粘膜への負担になります。
ステロイド薬
関節リウマチなどの自己免疫疾患と呼ばれる病気など、幅広く用いられていますが、胃の防御因子を弱める可能性があります。
これらの薬剤を服用中の方は、医師と相談し、その方に合った治療を検討することが重要です。当院では、他科で処方されたお薬との兼ね合いも考慮し、胃への負担が少ない治療計画をご提案いたします。
上記以外にも、様々な要因で潰瘍が発生することがあります。
過度な精神的・
身体的ストレス
自律神経の乱れから、胃酸分泌の増加や血流の悪化を招きます。
不規則な食生活・
アルコール・喫煙
胃粘膜への直接的な刺激や血流障害を引き起こします。
他の基礎疾患
糖尿病など、全身状態に影響を与える病気が背景にあることもあります。
「良性潰瘍」とは異なり、「がん性潰瘍」と呼ばれる悪性の潰瘍も存在します。良性潰瘍と悪性潰瘍は見た目では区別が難しい場合もありますが、胃カメラ検査で潰瘍の組織の一部を採取（生検）し、顕微鏡で詳しく調べて診断します。当院では、大学病院で多数の内視鏡検査・治療を経験し、微細な病変の鑑別にも精通しております。少しでも気になる症状があれば、放置せずご相談ください。
胃・十二指腸潰瘍は、上に挙げたような要因が重なることで発症しやすくなります。ご自身に当てはまる項目がないか、ぜひチェックしてみてください。
胃・十二指腸潰瘍を放置したり、治療が遅れたりすると、命に関わる重篤な合併症を引き起こすことがあります。以下のような症状が現れた場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。
消化管出血
潰瘍が深くえぐれた場合や、浅い潰瘍でも粘膜の表面近くの血管が破れてしまうと（例：デュラフォイ潰瘍など）、消化管内に出血が起こります。出血量が多い場合は、吐血（鮮血やコーヒーの残りカスのような吐物）として現れます。出血がゆっくりと続いている場合は、黒色便（コールタールのように真っ黒で臭いの強い便）として現れます。
穿孔
潰瘍がさらに進行し、胃や十二指腸の壁に穴が開いた状態が穿孔です。胃の内容物が腹腔内に漏れ出すため、激しい腹痛や腹膜炎（みぞおちから腹部全体まで広がる耐えがたい痛み）を引き起こします。穿孔は生命に関わる重篤な合併症であり、直ちに緊急手術が必要となります。
胃・十二指腸潰瘍の治療には、プロトンポンプ阻害薬（PPI）またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー（P-CAB）と呼ばれる、胃酸の分泌を抑える薬が第一選択薬として用いられます。内服治療期間は通常4〜8週間程度です。
胃粘膜を保護する目的で酸分泌抑制薬と組み合わせて用いる場合があります。
薬剤性潰瘍（NSAIDs潰瘍）に対してはミソプロストールと呼ばれる内服薬を用いる場合もあります。この薬は、胃酸分泌を抑えるとともに、胃・十二指腸粘膜の血流を豊富にし、粘液分泌を促進することによって粘膜を保護する作用があります。
一般的な胃・十二指腸潰瘍であれば、適切な治療により4〜8週間程度で完治します。ピロリ菌感染が原因の胃・十二指腸潰瘍の場合、引き続いて除菌治療を行うことで再発を予防します。胃酸分泌を抑制する薬1種類と抗生物質2種類の計3種類の薬剤を用いた「3剤併用療法」で1週間の内服治療を行います。また、難治性の潰瘍や再発を繰り返す潰瘍の場合は、特殊な疾患が潜んでいないか、潰瘍組織の一部を採取（生検）し、顕微鏡で詳しく調べたり、血液検査をすることによって、精密検査を追加します。
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