【IBD専門医Q&A】打っていいワクチン・注意が必要なワクチンを整理する─IBD治療中のワクチン接種ガイド|仙台駅の消化器内科・胃内視鏡検査(胃カメラ)・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

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【IBD専門医Q&A】打っていいワクチン・注意が必要なワクチンを整理する─IBD治療中のワクチン接種ガイド

【IBD専門医Q&A】打っていいワクチン・注意が必要なワクチンを整理する─IBD治療中のワクチン接種ガイド|仙台駅の消化器内科・胃内視鏡検査(胃カメラ)・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

2026年8月04日

【IBD専門医Q&A】打っていいワクチン・注意が必要なワクチンを整理する─IBD治療中のワクチン接種ガイド

こんにちは。仙台駅前でIBD(炎症性腸疾患)診療と内視鏡診療に力を入れている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室空間で、大学病院での経験を活かした専門的な治療をスムーズに受けていただけるクリニックを目指しています。

以前の記事では「帯状疱疹ワクチン」について詳しくお話ししました。今回はその総論として、IBD患者さんが知っておくべき「ワクチン全般」についてお話しします。

私自身も携わっております厚労省難病班のワクチン接種の啓蒙プロジェクトでは、「IBD患者におけるワクチン接種エキスパートコンセンサス」の改訂作業が進められています。今回の記事では、日本の実情に即した最新の考え方を分かりやすくお伝えできればと思います。

過去記事:帯状疱疹は「高齢者だけの病気」じゃない。免疫抑制中の方こそ知っておきたいワクチンの話

1. なぜIBD患者さんにワクチンが重要なのか

IBDの治療では、基本薬である5-ASA製剤以外に、ステロイド・免疫調節薬(アザチオプリンなど)・アドバンスドセラピー(生物学的製剤・JAK阻害剤など)と、さまざまな免疫に作用するお薬を使います。米国消化器病学会(ACG)の2025年ガイドラインでは、IBD患者さんの70%以上が、治療のどこかの時点で免疫を修飾する薬剤を使用するとされています。

免疫が抑えられた状態では、健康な方なら軽症で済む感染症が重症化したり、入院が必要になったりするリスクが高まります。ワクチンで予防できる感染症(VPD:Vaccine Preventable Diseases)から身を守ることは、腸の治療と同じくらい大切な「治療の一部」なのです。

ところが現実には、IBD患者さんのワクチン接種率は一般の方と比べて低いことが繰り返し報告されています。「免疫が下がっているからワクチンが心配」という誤解が、大切な予防医療を逆に妨げているというケースも少なくありません。

2. まず知っておきたい大原則:「生ワクチン」と「不活化ワクチン」の違い

ワクチンを理解する上で最も重要な基本知識が、この2種類の区別です。

不活化ワクチン・トキソイド

ウイルスや細菌を死滅させたもの、またはその一部の成分だけを使ったワクチンです。生きた病原体を含まないため、免疫を抑える治療中でも基本的に接種可能です。ただし、免疫が抑えられた状態では、ワクチンへの反応(免疫の獲得)が弱まることがあります。

代表例:インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチン、HPVワクチン、帯状疱疹不活化ワクチン(シングリックス®)、新型コロナワクチンなど

生ワクチン(弱毒生ワクチン)

弱毒化した、生きた病原体を使ったワクチンです。免疫が正常な人には安全ですが、免疫が抑えられている状態では、ワクチンのウイルス・菌自体が体内で増殖して感染症を引き起こす危険があります。そのため、原則として接種はできません

代表例:麻疹・風疹混合(MR)ワクチン、水痘(水ぼうそう)ワクチン、おたふくかぜワクチン、帯状疱疹生ワクチン、BCGなど

ただし「どの薬を使っていたら生ワクチンが禁忌か」は薬の種類・量・期間によって異なります。一般的には、プレドニゾロン換算で20mg/日以上+2週間以上のステロイド使用中、または生物学的製剤・JAK阻害剤・免疫調節薬(アザチオプリンなど)を使用中の方は、生ワクチン接種を避けることが推奨されています。

3. IBD患者さんに特に推奨されるワクチン

インフルエンザワクチン(毎年)

IBD患者さん全員に、毎年の接種が強く推奨されています。「免疫が下がっているから効かないのでは?」と思う方もいらっしゃいますが、効果が多少低くなっても、重症化を予防できるという点で、接種の意義は十分にあります。不活化ワクチンですので、治療中でも安全に接種できます。

なお、2024年から日本でも使用可能になった「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン」は生ワクチンに該当するため、免疫抑制中のIBD患者さんは使用できません(ご家族の接種も控える必要があります)。かかりつけ医療機関で接種する際は、必ず「注射の不活化ワクチン」を選ぶよう伝えてください。

肺炎球菌ワクチン

免疫が低下している方では肺炎球菌による肺炎が重症化しやすく、ACG 2025年ガイドラインでも免疫抑制治療を受けているIBD患者さんへの接種を積極的に勧めています。日本では現在、複数の肺炎球菌ワクチンが使用可能で、高齢者の定期接種の種類も変更になっています。接種のタイミングや種類については、主治医にご相談ください。

帯状疱疹ワクチン(不活化ワクチンはシングリックス®)

以前の記事で詳しくお話ししましたが、特にJAK阻害剤を使用中・使用予定の方に強く推奨されます。ACG 2025年ガイドラインでは、免疫を修飾する治療を受けている19歳以上のIBD患者さん全員に不活化帯状疱疹ワクチンを推奨しています。

過去記事:帯状疱疹は「高齢者だけの病気」じゃない。免疫抑制中の方こそ知っておきたいワクチンの話

B型肝炎ワクチン

B型肝炎ウイルス(HBV)に過去に感染したことがある方が免疫抑制治療を受けると、ウイルスが再活性化して重篤な肝炎を起こすことがあります(これを「B型肝炎の再活性化」といいます)。当院では、アドバンスド・セラピー(生物学的製剤・JAK阻害剤など)を開始する前に、必ずB型肝炎ウイルスの感染歴・免疫の有無を確認し、必要な方にはワクチン接種をお勧めしています。

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン

子宮頸がんの原因となるHPVを予防するワクチンです。免疫抑制治療中の方はHPV関連病変を生じやすいことが知られており、IBD患者さん(特に若い女性)への接種が推奨されています。男性にも接種が可能です。ACG 2025年ガイドラインでも接種が勧められており、不活化ワクチンなので治療中でも接種できます。

RSウイルスワクチン(新しいトピックス)

2023年以降、新たにRSVワクチンが登場しました。ACG 2025年ガイドラインでは、50〜74歳で何らかの基礎疾患やリスク因子を持つIBD患者さん、および75歳以上の全IBD患者さんへの接種を推奨しています。「RSウイルスは子どもの病気」と思われがちですが、免疫が低下している高齢者・基礎疾患のある方では重症肺炎の原因になります。比較的新しい情報ですので、覚えておいてください。

4. 「理想は治療開始前に」─タイミングが大切

ワクチン接種の原則として、免疫を抑える治療を開始する「前」に、必要なワクチンを済ませておくことが理想です。治療開始後に接種すると、免疫の獲得が不十分になることがあるためです。

とはいえ、「気づいた時にはすでに治療が始まっていた」という方がほとんどだと思います。その場合でも不活化ワクチンは治療中に接種可能ですので、「今からでも遅くない」と考えていただければ大丈夫です。

生ワクチンが必要な方(MRワクチンや水痘ワクチンの抗体がない方など)は、免疫抑制治療を開始する少なくとも4週間前までに接種を完了する必要があります。

5. 当院での対応

当院では、IBDと診断された際、または治療を変更するタイミングで、ワクチン接種歴や各感染症に対する抗体の有無を確認するようにしています。

特に生物学的製剤やJAK阻害剤などのアドバンスド・セラピーを開始する前には、B型肝炎と結核のスクリーニングに加え、接種が望ましいワクチンについてご案内しています。「自分は何のワクチンが必要なのか分からない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。一緒に確認・整理します。

6. まとめ

IBD治療中のワクチン接種を、以下の3点で覚えておいてください。

①不活化ワクチンは治療中でも基本的に打てる(インフルエンザ・肺炎球菌・B型肝炎・HPV・帯状疱疹不活化ワクチンなど)

②生ワクチンは免疫抑制中には原則禁忌(MR・水痘・おたふくかぜ・帯状疱疹生ワクチンなど)

③できれば治療開始前に確認・接種を済ませておくのが理想

腸の治療と感染症予防はセットで考える。これが当院の方針です。気になることがあれば、いつでも診察室でお話ししましょう。

引用文献

1. 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和7年度改訂版
2. IBD患者におけるワクチン接種エキスパートコンセンサス 令和4年3月
3. Farraye FA, Melmed GY, et al. ACG Clinical Guideline Update: Preventive Care in Inflammatory Bowel Disease. Am J Gastroenterol. 2025;120(7):1447-1473.

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