【IBD専門医Q&A】手術は「負け」じゃない─潰瘍性大腸炎・クローン病における手術の意味を正しく知ろう|仙台駅の消化器内科・胃内視鏡検査(胃カメラ)・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

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【IBD専門医Q&A】手術は「負け」じゃない─潰瘍性大腸炎・クローン病における手術の意味を正しく知ろう

【IBD専門医Q&A】手術は「負け」じゃない─潰瘍性大腸炎・クローン病における手術の意味を正しく知ろう|仙台駅の消化器内科・胃内視鏡検査(胃カメラ)・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)|せんだい駅前 消化器IBDクリニック

2026年9月01日

【IBD専門医Q&A】手術は「負け」じゃない─潰瘍性大腸炎・クローン病における手術の意味を正しく知ろう

こんにちは。仙台駅前でIBD(炎症性腸疾患)診療と内視鏡診療に力を入れている「せんだい駅前 消化器IBDクリニック」院長の志賀 永嗣です。当院は、プライバシーに配慮した個室空間で、大学病院での経験を活かした専門的な治療をスムーズに受けていただけるクリニックを目指しています。

これまでのシリーズ(薬の仕組みを知ろう①〜⑥)で、潰瘍性大腸炎・クローン病それぞれの薬物療法を詳しく解説してきました。今回はその締めくくりとして、薬だけでは解決できないケースで選択肢に挙がる「手術」についてお話しします。

「手術の話は怖いから読みたくない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、手術を正しく知ることは、治療の選択肢を広げ、かえって安心感につながります。ぜひ最後まで読んでいただければと思います。

過去記事:潰瘍性大腸炎の治療を総括する:基本の5-ASA製剤から最新治療までのステップ

過去記事:クローン病の治療を総括する:早期の「徹底管理」が未来を分ける理由

1. 潰瘍性大腸炎(UC)の手術「根治」が狙える唯一の選択肢

潰瘍性大腸炎は基本的に大腸の粘膜だけに炎症が起きる病気です。この特性から、大腸をすべて取り除くことで「病気そのものを根治できる」のが、UCの大きな特徴です。

どんなときに手術を考えるか

手術が必要になる場面は大きく2つです。

一つ目は緊急の場面です。大量出血・腸管穿孔(ちょうせんこう:腸に穴が開くこと)・中毒性巨大結腸症(ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう:腸が異常に拡張し、腸管穿孔に至りやすい重篤な状態)など、生命の危機に関わる状態では緊急手術が必要になります。

二つ目は待機的(計画的)な場面です。アドバンスド・セラピーを含む薬物療法を十分に行っても症状がコントロールできない場合、あるいは大腸がんや前がん病変(高度異型)が見つかった場合に、計画的な手術を検討します。薬で何とかしようと粘りすぎて、体力や栄養状態が著しく低下してから手術になると、術後のリスクが高くなってしまいます。「適切なタイミングで手術を決断すること」が長期的な健康を守ることになるのです。

多くの場合、一時的な人工肛門で済む

「手術=人工肛門(ストーマ)」と思い込んでいる方がとても多いのですが、現在のUCに対する標準的な手術では、多くの場合、永久的な人工肛門は必要ありません

標準術式は回腸嚢肛門吻合術(かいちょうのうこうもんふうごうじゅつ:IPAA)と呼ばれ、大腸をすべて取り除いた後、小腸の終わりの部分をJ字型に折り返して袋を作り(これを回腸嚢と言います)、肛門につなぐという手術です。この回腸嚢が大腸の代わりに便を一時的に貯める役割を果たします。

術後しばらくは排便回数が増えたり(1日4〜8回程度が多い)、夜間のトイレが必要になったりすることがありますが、時間とともに慣れていき、多くの方が以前と大きく変わらない日常を取り戻されています。

なお、手術は一般的に複数回(2〜3回)に分けて段階的に行われます。一時的に小腸側から便を出す「一時的ストーマ」を作ることはありますが、最後の手術の時には閉鎖します。

また、術後の注意点として、回腸嚢炎が起こることがあります。抗菌薬で治療できることがほとんどですが、慢性化する場合は内視鏡的な評価やアドバンスド・セラピーを必要とすることもあります。術後も定期的なフォローアップが欠かせません。

2. クローン病(CD)の手術「腸を守りながら」症状を改善する

クローン病はUCとは異なり、口から肛門まで消化管のどこにでも炎症が起こりえます。また、腸の深い層まで炎症が及ぶため、手術で腸を切除しても病気そのものは根治できません。これがUCとの最大の違いです。

それでも手術が必要になる場面はあります。腸が狭くなって詰まる狭窄(きょうさく)、腸に穴が開く穿孔(せんこう)、腸と他の臓器がバイパスしてしまう瘻孔(ろうこう)、腸の周囲に膿がたまる膿瘍(のうよう)などが代表的な合併症です。これらは薬だけでは解決できないことが多く、外科的な治療が必要になります。

「腸を切りすぎない」ことが大原則

クローン病の手術で最も重視されるのが腸管を温存(おんぞん)するという考え方です。クローン病は手術後に再発しやすく、繰り返し手術を行うと腸が短くなっていきます。腸が極端に短くなると「短腸症候群(たんちょうしょうこうぐん)」と呼ばれる深刻な栄養障害が起きるため、一回一回の手術でできる限り腸を残すことが鉄則です。

このため、狭窄のある部分については「切除する」だけでなく、狭くなった部分を切り開いて広げる狭窄形成術(きょうさくせいけいじゅつ)という腸を温存する術式も積極的に選択されます。また、内視鏡的に風船を使って狭窄を広げる内視鏡的拡張術(バルーン拡張)で手術を回避できるケースもあります。

手術後の再発予防が最重要──「術後管理」が命運を分ける

クローン病において、手術後に特に重要なのが術後の再発予防です。手術で病変部を取り除いても、適切な術後管理を行わないと、手術した部分のすぐ近く(吻合部:ふんごうぶ)に炎症が再び起きやすいことが分かっています。

そのため、術後6〜12か月以内に大腸カメラで吻合部の状態を確認し、炎症が再び起き始めていないかをチェックすることが強く推奨されています。そして、再発リスクが高い方(喫煙している・穿孔や瘻孔をきたしていた・以前にも手術経験がある・切除した端にも病変が残っているなど)には、術後早期からアドバンスド・セラピーを再開・継続することが推奨されています。

「手術して良くなったから薬はもう要らない」とお薬を自己判断でやめてしまうと、再発のリスクが大幅に高まります。クローン病において、手術はゴールではなく「薬物療法と二人三脚で再発を防いでいくスタート」と捉えることが大切です。

過去記事:クローン病の治療を総括する:早期の「徹底管理」が未来を分ける理由

3. 「手術のタイミング」を逃さないために

患者さんの中には「手術を勧められているけれど、できれば薬でなんとかしたい」と感じて、決断を先延ばしにしてしまう方もいらっしゃいます。その気持ちはとてもよく理解できます。

しかし、手術を先延ばしにすることにもリスクがあります。体力・栄養状態が低下した状態での手術は合併症のリスクが高くなりますし、緊急手術になると計画的な手術よりも侵襲(しんしゅう:体への負担)が大きくなります。また、長期のステロイド使用は術後の傷の回復にも影響します。

手術を選ぶことは諦めではなく、よりよい生活を選ぶ積極的な判断であることを、ぜひ知っておいてください。手術を担当する外科医と消化器内科の専門医が連携しながら、患者さん一人ひとりにとって最善のタイミングを一緒に考えていきます。

4. 当院での役割─「手術前後」を支える消化器専門クリニックとして

当院は外科ではないため手術そのものは行いませんが、IBD専門クリニックとして手術前後の重要な役割を担っています。

手術前には、薬物療法の最適化・栄養状態の改善・手術が必要かどうかの適切な見極めを行い、必要な場合は信頼できる外科医への紹介をスムーズに行います。

手術後には、定期的な大腸カメラによる術後再発の確認・アドバンスド・セラピーの再開・栄養管理など、長期的なフォローアップを担当します。特にクローン病の術後管理は、専門医による継続的なサポートが再発予防のカギとなります。

「手術を勧められたけれど、もう少し相談したい」「手術後のフォローをどこでやるべきか分からない」という方も、ぜひ一度ご相談ください。

5. まとめ

潰瘍性大腸炎とクローン病では、手術の意味合いが大きく異なります。

潰瘍性大腸炎:大腸全摘で根治が狙える。回腸嚢をつくることで、永久人工肛門にならずに済む。適切なタイミングでの決断が大切である。

クローン病:手術で根治はできないものの、合併症を解決し生活の質を改善できる。腸管温存が大原則。術後の薬物療法による再発予防が最も重要となる。

いずれも「手術=諦め」ではありません。正しく理解し、専門医と十分に話し合いながら、あなたにとって最善の選択を一緒に考えていきましょう。

引用文献

1. 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和7年度改訂版
2. Rubin DT, Ananthakrishnan AN, Siegel CA, Barnes EL, Long MD. ACG Clinical Guideline Update: Ulcerative Colitis in Adults. Am J Gastroenterol. 2025;120(6):1187-1224.
3. Gisbert JP, Adamina M, Böhm SK, et al. ECCO Guidelines on Therapeutics in Crohn’s Disease: Surgical Treatment. J Crohns Colitis. 2024;18(10):1531-1555.

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